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売却編

相続したマンションを売却する——期限・税金・手続きの完全ガイド

相続したマンションを売却する——期限・税金・手続きの完全ガイド
この記事の監修者
南 和希
株式会社スピアード 代表取締役
宅地建物取引士 / 2級FP技能士

1999年、神奈川県横浜市生まれ。
新卒で大手不動産会社に入社後、営業部内トップセールスを達成。
3年の実績を経て独立し、株式会社スピアードを設立。
代表プロフィールを見る →

売買仲介・投資用不動産・中古不動産の仕入れ再販・リノベーションなど、不動産業界の幅広い領域で実務経験を持つ。
自身でも不動産の購入を3回、売却を2回、リノベーションを1回経験した実践派。
現在はメディア取材・自社サービスが計6媒体に掲載されている。

相続による不動産売却は、通常の売却と決定的に違う点が二つあります。
「期限のある手続きが複数同時に走る」こと、そして「関係者が自分一人ではない」ことです。
悲しみの中で淡々と手続きを進めるのは精神的にも大変ですが、期限を逃すと過料や税負担増という実害が発生します。

この記事では、相続発生から売却・確定申告までの全体像を、期限・税金・実務の3点に絞って整理します。
ご家族が亡くなった直後に読む記事としてではなく、「いずれ来るその日」のための予習として読んでいただければと思います。


まず期限を押さえる——相続のタイムリミット一覧

相続発生からの主な期限 相続発生(被相続人の死亡) 3ヶ月以内 相続放棄・限定承認の申述(家庭裁判所) 4ヶ月以内 被相続人の準確定申告(所得税) 10ヶ月以内 相続税の申告・納付 3年以内 相続登記(義務化済・怠ると10万円以下の過料の対象) 3年10ヶ月以内 取得費加算の特例の適用期限(売却して節税できるリミット)
2024年4月から相続登記は法律上の義務。
「放置」という選択肢はなくなりました。

特に重要なのが次の二つです。
第一に、相続登記の義務化。
2024年4月以降、不動産の取得を知った日から3年以内の登記が義務となり、正当な理由なく怠ると10万円以下の過料の対象になります。
そして実務上はそれ以前に、相続登記が完了していないと売却そのものができません。

第二に、取得費加算の特例。
相続税を払った人が、相続税の申告期限の翌日から3年以内(=相続発生からおよそ3年10ヶ月以内)に売却すると、払った相続税の一部を取得費に加算でき、譲渡所得税を減らせます。
「いつか売る」つもりなら、この期限内に売るのが税務上は最も有利です。


売却までの流れ——遺産分割協議が最大の山場

1
遺言書の確認・相続人の確定

遺言書の有無をまず確認(公正証書遺言は公証役場で検索可能)。
戸籍を遡って相続人を確定する。

2
相続財産の調査・評価

不動産・預貯金・有価証券・負債を棚卸し。
マンションは固定資産税評価額と市場価格の両方を把握する。

3
遺産分割協議——誰がどう取得するかを決める

相続人全員の合意が必要。
不動産は「現物分割・代償分割・換価分割」のいずれかを選ぶ(後述)。

4
相続登記(名義変更)

遺産分割協議書をもとに司法書士へ依頼するのが一般的。
登記完了まで数週間〜1ヶ月程度を見込む。

5
売却活動・引渡し

ここからは通常の売却と同じ。
査定→媒介契約→売出→契約→決済。
室内残置物の処分も並行して進める。

6
譲渡所得の確定申告(売却の翌年2〜3月)

売却益が出た場合は申告必須。
取得費加算の特例もここで適用する。

分け方は3種類——マンションなら「換価分割」が基本線

分割方法内容マンションでの現実性
現物分割不動産は長男、預金は長女、のように財産ごとに分ける財産の価値が偏ると不公平感が残りやすい
代償分割一人が不動産を取得し、他の相続人へ代償金を払う取得者に資金力が必要。
住み続けたい相続人がいる場合に有効
換価分割売却して現金化し、相続人で分ける最も公平で揉めにくい。誰も住む予定がないなら基本線

要注意:「とりあえず共有名義」は将来の紛争予約

協議がまとまらないからと法定相続分で共有登記にすると、売却には共有者全員の同意が必要になり、一人でも反対・連絡不能・認知症・死亡(さらなる相続発生)があれば売れなくなります。
共有者が世代をまたいで増殖し、処分不能になった物件を何度も見てきました。
共有は「先送り」であって「解決」ではありません。


税金の落とし穴——「取得費5%」で税額が跳ね上がる

契約書類と計算
親が物件を買ったときの売買契約書。
これ一枚の有無で、税額が数百万円変わることがあります。

相続したマンションを売ったときの譲渡所得は、「売却価格−取得費−譲渡費用」で計算します。
ここでの取得費は、被相続人(親など)が当時購入した価格を引き継ぎます。
問題は、その購入価格を証明する売買契約書が見つからないケースです。

取得費が不明な場合、税務上は「概算取得費=売却価格の5%」で計算せざるを得ません。
例えば3,000万円で売れたマンションの取得費が150万円扱いになり、差額のほぼ全額が課税対象になります。
実際には親が2,000万円で買っていたとしても、です。
長期譲渡でも税率20.315%ですから、税額の差は数百万円規模になり得ます。

ポイント:実家の売買契約書を「今のうちに」確認しておく

相続が起きてから探すのでは遅いことがあります。
親が元気なうちに、購入時の売買契約書・領収書・住宅ローンの金銭消費貸借契約書の保管場所を確認しておいてください。
これは縁起の悪い話ではなく、家族の資産を守る実務です。
契約書がない場合も、通帳の出金記録や分譲時パンフレットの価格表など、購入価格を合理的に示す資料で認められる場合があるため、諦めずに税理士へ相談を。

3,000万円特別控除は「住んでいたか」がカギ

自宅売却で使える3,000万円特別控除は、相続人自身がそのマンションに住んでいなければ原則使えません。
親と同居していた家を相続して売る場合は適用余地がありますが、別居の親のマンションを相続して売る場合は対象外です。
なお、相続空き家に関する特別控除の特例は戸建てを主な対象とした制度で、分譲マンション(区分所有建物)は対象外です。
「ネットで見た特例が使えるはず」と思い込まず、適用要件は必ず税理士か税務署に確認してください。


実務で差がつく3つの準備

専門家との相談
相続売却は不動産会社・司法書士・税理士の連携案件。
窓口を一本化すると負担が激減します。

①残置物の処分と室内の見せ方を軽視しない。
故人の家財が残ったままの内覧は、買い手の印象を大きく下げます。
遺品整理業者の手配・形見分けのスケジュールも売却計画に組み込んでください。
空室にしてクリーニングを入れるだけで、成約スピードと価格は目に見えて変わります。

②管理費・固定資産税は相続人の負担になる。
相続した瞬間から、管理費・修繕積立金・固定資産税の支払い義務は相続人に引き継がれます。
空室のまま1年放置すれば、数十万円が静かに流出します。
「ゆっくり考えたい」気持ちは当然ですが、保有コストが発生し続けていることは認識しておくべきです。

③専門家チームの窓口を一本化する。
相続売却には司法書士(登記)・税理士(相続税・譲渡所得)・不動産会社(売却)が関わります。
相続人がバラバラに動くと、情報の食い違いと手戻りが頻発します。
相続案件に慣れた不動産会社をハブにして、専門家への連携を任せるのが、時間的にも精神的にも最も負担の少ない進め方です。


まとめ

相続マンション売却の要点は、①期限の把握(登記3年・取得費加算3年10ヶ月)、②共有名義を避ける分割協議、③取得費資料の確保の3点です。
この3つさえ押さえれば、あとは通常の売却と同じ。
逆にどれか一つでも欠けると、過料・税負担増・売却不能という形で確実に跳ね返ってきます。
早めに全体像を描き、専門家を巻き込んで進めてください。


株式会社スピアードでは、首都圏を中心に「資産価値重視」の不動産購入・売却サポートを行っています。
購入・売却をご検討中の方は、お気軽にお問い合わせください。

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