「買取なら1週間で現金化できます」。
売却を考え始めると、こうした広告を目にする機会が増えます。
早く、確実に、手間なく売れるのは事実です。
ただし、その代わりに失うものがあります。
結論から言うと、買取価格は仲介で売れる価格の7〜8割が目安です。
6,000万円で売れるマンションなら、買取では4,500万〜4,800万円前後になります。
この1,000万円以上の差を払ってでも、時間と確実性を買うべき場面がある。
買取を選ぶかどうかは、その場面に当てはまるかどうかで決まります。
■ 30秒で分かる結論
・仲介は市場の買い手に売る方法、買取は不動産会社に直接売る方法
・買取価格は、仲介で売れる価格の7〜8割が目安
・買取業者は、リフォーム費・税金・販売経費・利益を差し引いて買取価格を決めている
・期限がある、室内の状態が悪い、知られたくない、買い手が付きにくい物件なら買取が合理的
・駅近・人気物件を急ぐ理由なく買取に出すのは、最も損な売り方
仲介と買取の違い
仲介は、不動産会社に買い手を探してもらい、個人などの買い手に売る方法です。
買取は、不動産会社そのものが買い手になる方法です。
| 比較項目 | 仲介 | 買取 |
|---|---|---|
| 売却価格 | 市場価格 | 市場価格の7〜8割が目安 |
| 現金化までの期間 | 3〜6か月が目安 | 最短1〜2週間、通常1か月前後 |
| 内見対応 | 必要 | 業者の確認1回程度 |
| 仲介手数料 | 必要(売却価格の3%+6万円+税が上限) | 直接売るなら不要 |
| 契約不適合責任 | 負うのが一般的 | 免責にできることが多い |
| 周囲に知られるか | 広告を出せば知られる | 広告を出さずに売れる |
首都圏の中古マンションは、売り出しから成約まで平均で3か月近くかかります。
仲介で売る場合、契約から引渡しまでを含めると、決めてから現金になるまで4〜5か月を見ておく必要があります。
買取価格が7〜8割になる理由
買取業者は、買った物件をリフォームして再び売る、いわゆる買取再販で利益を出しています。
そのため、買取価格は「再販でいくらで売れるか」から逆算して決まります。
| 再販価格6,000万円の物件の場合(試算例) | 金額 |
|---|---|
| 再販で売れる価格 | 6,000万円 |
| 業者の利益(10%程度) | −600万円 |
| リフォーム費用 | −400万円 |
| 販売時の仲介手数料・広告費 | −200万円 |
| 取得時の税金・登記費用、保有中の金利など | −150万円 |
| 買取価格の目安 | 約4,650万円(約78%) |
利益が10%と聞くと大きく見えますが、業者は売れ残りや値下がりのリスクを全部負っています。
加えて、宅建業者が売主になる場合、買主に対して最低2年間の契約不適合責任を負うことが法律で決まっています。
その分の費用とリスクも価格に入っているので、7〜8割という水準は業者が暴利をむさぼっているわけではありません。
買取を選ぶべき4つのケース
住み替え先の決済日、相続税の納付期限、転勤など、いつまでに現金が必要かが決まっている場合。仲介で売れ残ったときのリスクが、買取との価格差より大きいなら買取が合理的です。
水回りの交換や間取りの変更が必要な住戸は、個人の買い手には敬遠されます。仲介でも結局リフォーム費用分を値引きされるなら、買取との差は縮まります。
仲介ではポータルサイトに広告が出ます。離婚や相続などの事情で、売却を知られたくない場合は、広告を出さない買取が向いています。
旧耐震、事故物件、再建築や管理に問題がある物件は、住宅ローンが使えない、告知が必要などの理由で、個人の買い手が限られます。
逆に、駅近、大規模、築浅のタワーマンションのように、仲介で十分に買い手が付く物件を急ぐ理由もなく買取に出すのは、最も損な売り方です。
価格差の1,000万円以上を、何の対価もなく手放すことになります。
第三の選択肢:買取保証付きの仲介
期限はあるが、できるだけ高く売りたい。
その場合は、買取保証付きの仲介という方法があります。
一定の期間は仲介で市場に出し、期限までに売れなければ、あらかじめ決めた価格で不動産会社が買い取る仕組みです。
この方法の価値は、最悪のケースの価格が先に決まることです。
住み替えで新居の決済日が決まっている人にとっては、資金計画を立てやすくなります。
注意点は、保証される買取価格が通常の買取よりさらに低めに設定されることがある点です。
仲介期間の長さと、保証価格の根拠を必ず確認してください。
買取で損をしないための注意点
買取を依頼するときの確認事項
・買取価格は1社だけで決めない。最低でも3社程度は比較する
・仲介会社を通した買取では、仲介手数料がかかる場合がある。手残りで比べる
・契約不適合責任の免責、引渡し時期、残置物の扱いを契約書で確認する
・仲介で売った場合の想定価格と手残りも同時に出してもらい、差額を数字で把握する
結論:差額で時間と確実性を買う価値があるかで決める
買取か仲介かは、性格の好みで決めるものではありません。
仲介で売った場合の手残りと、買取の手残りの差を数字で出し、その差額で期限の確実性や手間の削減を買う価値があるかで決めます。
差額に見合う理由があるなら買取、なければ仲介です。


