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売却編

不動産売却にかかる税金——3,000万円控除と「5年の壁」を簡単解説

不動産売却にかかる税金——3,000万円控除と「5年の壁」を簡単解説
この記事の監修者
南 和希
株式会社スピアード 代表取締役
宅地建物取引士 / 2級FP技能士

1999年、神奈川県横浜市生まれ。
新卒で大手不動産会社に入社後、営業部内トップセールスを達成。
3年の実績を経て独立し、株式会社スピアードを設立。
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売買仲介・投資用不動産・中古不動産の仕入れ再販・リノベーションなど、不動産業界の幅広い領域で実務経験を持つ。
自身でも不動産の購入を3回、売却を2回、リノベーションを1回経験した実践派。
現在はメディア取材・自社サービスが計6媒体に掲載されている。

「売却したら、税金っていくら取られるんですか?」——売却相談で必ず出る質問です。そして答えを聞いて驚かれます。「多くの場合、マイホームの売却なら税金はかかりません」と。

一方で、何も知らずに売ると数百万円単位の税金を無駄に払うケースも実在します。分かれ目は、制度を知っているかどうか。それだけです。

いまの市況では、この知識の重要性が増しています。首都圏中古マンションの成約価格は13年連続で上昇し、2025年は平均5,200万円、東京都区部(23区)に限れば平均7,401万円(新築マンションなら23区平均1億3,613万円)。成約㎡単価はこの13年で117.3%上昇しました(東日本レインズ)。数年前に買った物件を売るだけで数千万円の利益が出ることが珍しくなくなった。売却益への課税は、もはや普通の住み替えの話です。

出典:公益財団法人東日本不動産流通機構「首都圏不動産流通市場の動向(2025年)」(2026年1月公表)
https://www.reins.or.jp/pdf/trend/sf/sf_2025.pdf
出典(新築):株式会社不動産経済研究所「首都圏 新築分譲マンション市場動向 2025年」(2026年1月公表)
https://www.fudousankeizai.co.jp/share/mansion/654/ss2025.pdf
※税額の最終確認は税理士または税務署へ。本記事は意思決定に必要な「構造」の解説です。

税金がかかるのは「利益が出たとき」だけ

大原則。売却価格そのものに税金がかかるわけではありません。課税されるのは譲渡所得=売却で出た利益です。

譲渡所得 = 売却価格 −(取得費 + 譲渡費用)

取得費は「買ったときの物件価格+購入時の諸費用」(建物部分は減価償却で目減り)。譲渡費用は仲介手数料・印紙税など売るための費用です。「買った値段+諸経費」より高く売れて、初めて課税対象になります。

注意:購入時の契約書がないと「売却価格の5%」扱い

相続物件などで購入時の契約書が見つからない場合、取得費は「譲渡価額の5%相当額」で計算されます(概算取得費)。5,000万円で売れた物件なら取得費250万円扱い。ほぼ全額が利益とみなされ、税額が跳ね上がります。売買契約書は数百万円の価値を持つ書類です。必ず保管を。

出典:国税庁 タックスアンサー No.3258「取得費が分からないとき」
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/joto/3258.htm

税率は「5年の壁」で倍近く変わる

区分所有期間税率(復興特別所得税込み)
短期譲渡所得5年以下39.63%
長期譲渡所得5年超20.315%
10年超所有の軽減税率
(マイホーム・6,000万円以下の部分)
10年超14.21%
出典:国税庁 タックスアンサー No.3211「短期譲渡所得の税額の計算」/No.3208「長期譲渡所得の税額の計算」/No.3305「マイホームを売ったときの軽減税率の特例」
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/joto/3208.htm ほか

短期と長期でほぼ2倍の差。そして最大の注意点——この「5年」は売却した年の1月1日時点で判定されます。

2021年6月に購入した物件を2026年7月に売ると、実際の所有期間は5年超でも、2026年1月1日時点では「4年7ヶ月」なので短期扱い。長期になるのは2027年1月1日以降の売却です。利益が大きい物件では、売却時期を数ヶ月ずらすだけで税額が数百万円変わることがあります。


最強の特例:3,000万円特別控除

マイホーム(居住用財産)の売却なら、所有期間の長短に関係なく、譲渡所得から最高3,000万円まで控除できます。利益が3,000万円以内なら税金はゼロ。「多くの場合税金はかからない」と言ったのは、この特例があるからです。

主な適用要件(国税庁 No.3302より要約)

・自分が住んでいる家屋。以前住んでいた家屋は住まなくなった日から3年を経過する日の属する年の12月31日までに売却

・売った年の前年・前々年にこの特例等を受けていない(実質3年に1度)

・親子や夫婦など「特別の関係がある人」への売却でない

・特例目的の入居、仮住まい、別荘は適用外

出典:国税庁 タックスアンサー No.3302「マイホームを売ったときの特例」
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/joto/3302.htm

最重要:住宅ローン控除と併用できない

国税庁は、住宅ローン控除の入居年とその前年・前々年に3,000万円控除を受けた場合(入居年の翌年から3年目までの売却で使う場合も同様)、住宅ローン控除は適用できないと明記しています。

売却益が小さいなら→新居の住宅ローン控除を優先。売却益が大きいなら→3,000万円控除を優先。住み替えの資金計画は、売却前にこの比較まで済ませておくべきです。

さらに、所有期間10年超のマイホームは、3,000万円控除後の課税譲渡所得のうち6,000万円以下の部分に14.21%の軽減税率が適用され、3,000万円控除と併用できます(国税庁 No.3305)。


損が出た場合も申告する価値がある

一定の要件を満たすマイホームの売却損は、給与所得など他の所得と損益通算でき、引き切れない分は翌年以後3年内に繰り越して控除できます(買換えの場合の特例と、住宅ローンが残っている場合の特例の2種類)。「損したから申告不要」ではなく「損したからこそ申告で取り返す」。知らずに放置している方が本当に多いです。

出典:国税庁 タックスアンサー No.3370/No.3390(譲渡損失の損益通算・繰越控除)
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/joto/3370.htm
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/joto/3390.htm

確定申告を忘れずに

3,000万円控除も軽減税率も損益通算も、確定申告をして初めて適用されます。売却した翌年の2月16日〜3月15日に申告。「控除で税額ゼロだから申告不要」ではなく、申告しなければ控除自体が受けられない、が正解です。


まとめ:税金は「売る前」に設計するもの

・課税されるのは利益のみ。購入時の契約書は絶対保管(ないと取得費5%扱い)

・5年の壁(1月1日判定)で税率は39.63%→20.315%に半減

・マイホームなら3,000万円控除で多くのケースは税額ゼロ

・ただし住宅ローン控除と併用不可。住み替えは事前比較を

・適用はすべて確定申告が条件

売却時期を数ヶ月調整するだけで手残りが数百万円変わる。税金は売却が終わってから考えるものではなく、売り出し前に設計するものです。

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