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売却編

売り出し価格の決め方——チャレンジ価格が許される物件、即死する物件

売り出し価格の決め方——チャレンジ価格が許される物件、即死する物件
この記事の監修者
南 和希
株式会社スピアード 代表取締役
宅地建物取引士 / 2級FP技能士

1999年、神奈川県横浜市生まれ。
新卒で大手不動産会社に入社後、営業部内トップセールスを達成。
3年の実績を経て独立し、株式会社スピアードを設立。
代表プロフィールを見る →

売買仲介・投資用不動産・中古不動産の仕入れ再販・リノベーションなど、不動産業界の幅広い領域で実務経験を持つ。
自身でも不動産の購入を3回、売却を2回、リノベーションを1回経験した実践派。
現在はメディア取材・自社サービスが計6媒体に掲載されている。

売却の成否は、売り出し価格を決めた瞬間に8割決まります。
販売活動の頑張りや写真の質も重要ですが、それらはすべて「価格設定が合理的であること」が前提です。

このコラムでは、「チャレンジ価格はアリかナシか」「売れなかったとき、いつ・いくら下げるか」を、市場データとともに解説します。


まず数字で見る:売り出しから成約まで「約3ヶ月」

東日本レインズの統計によると、首都圏中古マンションが登録から成約に至る日数は、2025年で平均82.5日(2024年は85.3日)。標準的な物件でも、売り出しから成約までおおむね3ヶ月弱かかるのが実勢です。契約から引渡しまでの期間を加えると、「売ろう」と決めてから現金化までは4〜5ヶ月が現実的な線です。

もう一つ重要な数字。2025年の東京都区部(23区)の中古マンションは、新規登録物件(売り出し中)の平均価格が8,288万円に対し、成約物件の平均価格は7,401万円。市場に出ている「売り希望価格」と実際に「売れた価格」の間には、常に開きがあることをデータは示しています。

よく引き合いに出される「首都圏平均」は成約5,200万円ですが、これは価格が下落した埼玉・千葉・神奈川を含んだ数字です。23区で売買を考えるなら、この平均はあてになりません。中古でも23区平均は7,401万円、新築マンションに至っては23区平均1億3,613万円(都心6区は1億9,503万円)。相場観は必ず「自分の区・エリア」で持つべきです。

「売り希望」と「現実」(東京都区部・中古マンション・2025年) 新規登録価格(平均) 8,288万円 成約価格(平均) 7,401万円 売り出し価格は「願望」、成約価格は「現実」 出典:東日本レインズ「首都圏不動産流通市場の動向(2025年)」より作成
この2つの距離をどう設計するかが、売り出し価格戦略のすべて。
出典:公益財団法人東日本不動産流通機構「首都圏不動産流通市場の動向(2025年)」都県・地域別(2026年1月公表)
https://www.reins.or.jp/pdf/trend/sf/sf_2025.pdf
出典(新築):株式会社不動産経済研究所「首都圏 新築分譲マンション市場動向 2025年」(2026年1月公表)
https://www.fudousankeizai.co.jp/share/mansion/654/ss2025.pdf

チャレンジ価格が「許される物件」の3条件

相場より高めに出すチャレンジ価格。条件が揃えば推奨します。ただし、許されるのは次の3条件を満たす場合だけです。

条件1:物件に「唯一性」がある
角部屋、最上階、眺望抜け、希少な間取り、フルリノベーション済み。比較対象が存在しない物件は、価格の説得力を売主側が握れます。

条件2:競合が少ない
同じマンション内に売り出しが3件も4件もある状態でのチャレンジ価格は機能しません。買い手は必ず比較します。マンション内の売出状況は、価格を決める前に必ず確認してください。なお2025年の成約㎡単価は東京都区部+13.2%に対し埼玉・千葉・神奈川の一部はマイナス。「相場が上がっているから強気で」が通用するエリアと、しなくなったエリアに分かれています。

条件3:時間に余裕がある
チャレンジ価格は「市場の反応を試す」行為で、試すには時間がかかります。成約まで平均約3ヶ月という実勢を踏まえると、期限がある売却は最初から適正価格で出す。これが鉄則です。

逆に「即死する」パターン

・中住戸・標準的な間取り・競合多数という「比較されやすい物件」で強気に出す

・「ダメなら下げればいい」と改定計画なしで始める

・査定額が一番高い会社を選び、その金額のまま売り出す

特に3つ目は要注意。媒介契約欲しさに高い査定を出す会社は存在します。反響ゼロで値下げを繰り返した時点で、物件には「売れ残り」の印象がついています。中古の買い手は掲載期間と価格改定履歴を見ています。「3ヶ月前から300万円下がっている物件」は指値の標的です。


価格改定は「事前に設計」しておく

売れなかったときに考えるのではなく、売り出す前にタイミングと幅を決めておく。実務の目安は以下です。

・判定期間は2〜4週間単位:ポータルサイトでは掲載直後の新着期間に反響が集中します。この初動の数字がすべての判断材料です。
・反響の読み方:問い合わせはあるが内見ゼロ→価格が原因の可能性大。内見はあるが申込みなし→価格または見せ方。問い合わせ自体がない→価格が市場から無視されている状態。
・改定幅は「検索の壁」を跨ぐ:100万円刻みの微調整より、6,980万円→6,780万円のように検索価格帯の壁を越える改定の方が、新しい買い手層の画面に表示されて効果的です。

平均成約日数82.5日から逆算すると、「2〜4週間×2〜3回の判定サイクル」でちょうど3ヶ月。市場の実勢と改定サイクルは、きれいに噛み合うように設計できます。


「頭と尻尾はくれてやれ」

相場の天井で売り抜けたい。誰もがそう思います。ですが、天井は過ぎてから分かるものです。天井を狙って時間をかけた結果、市況が反転して数百万円逃すケースを、私たちは何度も見てきました。

核心:頭と尻尾はくれてやれ。

最高値の一歩手前でも、納得できる価格でスパッと売り切る。売却で得た資金と時間を、次の意思決定に回す方がトータルでは勝ちます。

最後に。価格戦略をどれだけ緻密に設計しても、実行するのは仲介の担当者です。改定のタイミングで的確に助言し、反響データを開示し、囲い込みをしない。そういう担当者と組めるかどうかが、価格設計と同じくらい売却の結果を左右します。

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