都心の好立地で、価格は周辺相場の7割。
魅力的に見える中古マンションの多くが、1981年以前に建築確認を受けた「旧耐震」の物件です。
結論から言うと、旧耐震マンションは「安い理由をすべて受け入れられる人」だけが買ってよい物件です。
その理由は、建物の強さだけでなく、ローン、税制、そして売るときの買い手の数にまで及びます。
築40年以上のマンションは、2023年末時点で約136.9万戸。
国土交通省の推計では、20年後の2043年末には約463.8万戸と3.4倍に増えます。
古いマンションとどう向き合うかは、これから中古を買うすべての人に関わるテーマです。
■ 30秒で分かる結論
・線引きは「1981年6月1日以降に建築確認を受けたか」。竣工日ではない
・旧耐震だと、住宅ローン控除・登録免許税の軽減・贈与税の非課税が原則使えない
・銀行によっては融資額や期間が絞られ、次の買主も同じ制約を受ける
・買うなら、立地が抜群、耐震診断・改修の実績あり、管理が良好の3条件がそろう物件に限る
旧耐震と新耐震の違い
1981年6月1日に建築基準法の耐震基準が大きく改正されました。
この日以降に建築確認を受けた建物が「新耐震」、それより前が「旧耐震」です。
| 旧耐震 | 新耐震 | |
|---|---|---|
| 建築確認の時期 | 1981年5月31日以前 | 1981年6月1日以降 |
| 想定している地震 | 震度5程度の中規模地震で大きな損傷を受けない | 中規模地震でほぼ損傷しない。震度6強〜7程度の大規模地震でも倒壊・崩壊しない |
注意したいのは、基準が「建築確認の日」で決まることです。
マンションは建築確認から竣工まで1〜2年かかるため、1982年や1983年に完成した物件の中にも旧耐震が混ざっています。
築年数だけで判断せず、建築確認済証や確認申請の時期を必ず確認してください。
影響1:住宅ローン控除・登録免許税・贈与税の優遇が原則使えない
中古住宅で税の優遇を受けるには、原則として「1982年1月1日以降に建築された住宅」であることが要件になっています。
ここでいう建築日は、登記簿の新築年月日で判断します。
これより前の物件で優遇を受けるには、耐震基準適合証明書などで耐震性を証明しなければなりません。
旧耐震だと原則使えない主な優遇
・住宅ローン控除
・登録免許税の軽減(建物の所有権移転、抵当権設定)
・住宅取得等資金の贈与税の非課税
マンションの耐震基準適合証明書は、建物全体の耐震性を証明する必要があり、個人の買主が取得するのは現実的に困難です。
つまり旧耐震マンションでは、これらの優遇は「使えない前提」で資金計画を組むのが実務上の正解です。
住宅ローン控除だけでも、借入額によっては10年以上で数百万円の差になります。
表面上の価格差は、この優遇の差を差し引いて評価する必要があります。
影響2:住宅ローンの選択肢が狭まる
旧耐震マンションは、金融機関によって担保評価が低くなりやすく、融資額や返済期間が絞られることがあります。
フラット35も、中古住宅では原則として建築確認日が1981年6月1日以降であることが要件です。
それ以前の物件は、機構の定める耐震評価基準に適合することを確認できなければ利用できません。
この制約は、自分が買うときだけの問題ではありません。
売るときには、次の買主も同じ制約を受けます。
ローンが組みにくい物件は、現金で買える人や、条件の厳しいローンを受け入れられる人に買い手が限られます。
影響3:出口の買い手が減る
資産性は「将来の買い手の多さ」で決まります。
旧耐震マンションは、税制とローンの両面で買い手の母数が小さくなります。
さらに築年数が進めば、配管の更新、エレベーターの交換、外壁の大規模修繕など、修繕積立金の負担も重くなっていきます。
一方で、明るい材料もあります。
2026年4月に施行された改正区分所有法では、耐震性が不足するマンションなどについて、建替え決議に必要な賛成の割合が5分の4から4分の3に引き下げられました。
建替えや敷地売却が進めやすくなる方向の改正です。
ただし、建替えには区分所有者の費用負担が伴うことが多く、それだけで資産価値が保証されるわけではありません。
https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/content/001623967.pdf
参考:住宅金融支援機構「フラット35 中古住宅の技術基準」、国税庁「住宅借入金等特別控除」
それでも旧耐震を買っていい3つの条件
旧耐震だから一律に避けるべき、とは考えていません。
都心の一等地にある旧耐震マンションの中には、新築では二度と手に入らない立地のものがあります。
次の3つがそろうなら、検討する価値はあります。
駅徒歩5分以内、都心の希少エリアなど、同じ条件の新しい物件が出てこない立地。立地が普通なら、旧耐震を選ぶ理由はありません。
管理組合が耐震診断を行い、その結果と改修の履歴を開示しているか。診断をしていない、または結果を開示しない物件は避けます。
長期修繕計画が見直されているか、積立金の残高は十分か、建替えや再生について議論が始まっているか。総会議事録で確認します。
この3条件を満たしたうえで、税の優遇が使えない分、ローンが組みにくい分を価格に織り込めているかを判断します。
相場の7割という価格が、それらを差し引いても割安なのか。
そこを数字で説明できないなら、買うべきではありません。
結論:「安さ」ではなく「代替不能な立地」に払う
旧耐震マンションの判断基準
・建築確認日が1981年6月1日以降かを確認する(竣工日ではない)
・旧耐震なら、ローン控除などの税優遇は使えない前提で資金計画を組む
・ローンが組みにくい分、将来の買い手が減ることを価格に織り込む
・買うなら、代替不能な立地、耐震診断と改修の実績、健全な管理の3条件がそろう物件に限る
旧耐震マンションは、安く見えるだけの理由がある物件です。
その理由を一つずつ数字に置き換えても、なお欲しいと思える立地かどうか。
判断の軸はそれだけです。

