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購入編

修繕積立金で分かる、危険なマンションの見分け方

修繕積立金で分かる、危険なマンションの見分け方
この記事の監修者
南 和希
株式会社スピアード 代表取締役
宅地建物取引士 / 2級FP技能士

1999年、神奈川県横浜市生まれ。
新卒で大手不動産会社に入社後、営業部内トップセールスを達成。
3年の実績を経て独立し、株式会社スピアードを設立。
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売買仲介・投資用不動産・中古不動産の仕入れ再販・リノベーションなど、不動産業界の幅広い領域で実務経験を持つ。
自身でも不動産の購入を3回、売却を2回、リノベーションを1回経験した実践派。
現在はメディア取材・自社サービスが計6媒体に掲載されている。

中古マンションの検討で、価格や間取りは熱心に比較するのに、修繕積立金をほぼ見ていない方が非常に多い。

はっきり言います。修繕積立金は、そのマンションの「健康診断書」です。ここを読み解けるだけで、将来値下がりする物件・住んでから後悔する物件をかなりの精度で回避できます。


大前提:積立金が「安い」のは良いことではない

月々のランニングコストは安い方が嬉しい。その感覚が最初の落とし穴です。マンションは必ず劣化し、外壁・屋上防水・給排水管・エレベーターの修繕には数億円単位の費用がかかります。その原資が修繕積立金です。国土交通省自身が、ガイドラインでこう指摘しています。

「修繕積立金の当初月額が著しく低く設定される等の例も見られます。(中略)必要な修繕積立金が十分に積み立てられず、修繕工事費が不足するといった問題が生じているとの指摘もあります。」
出典:国土交通省「マンションの修繕積立金に関するガイドライン」(令和6年6月改定)
https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/content/001747009.pdf

積立金が安い=将来必要なお金を貯めていない、ということ。ツケは必ず将来の所有者に回ってきます。具体的には、大規模修繕時の一時金徴収(数十万〜百万円単位)、積立金の大幅値上げ(2倍・3倍も珍しくない)、資金不足で修繕できず資産価値が下落——のいずれかの形で。


物差し①:国交省ガイドラインの目安

いくらなら適正なのか。物差しは、国交省が366件の長期修繕計画事例から算出した「目安」です(㎡当たり月額)。

地上階数/延床面積目安の幅平均値
20階未満/5,000㎡未満235〜430円335円
20階未満/5,000〜10,000㎡170〜320円252円
20階未満/10,000〜20,000㎡200〜330円271円
20階未満/20,000㎡以上190〜325円255円
20階以上(超高層)240〜410円338円

70㎡なら、おおむね月1.8万〜2.4万円程度が標準ゾーン(機械式駐車場は別途加算)。検討中の物件の「月額積立金÷専有面積」を計算してみてください。目安幅の下限を大きく割り込む物件は、将来の値上げ・一時金を織り込んで検討すべきです。

物差し②:市場の「実勢」はもっと生々しい

ガイドラインは「あるべき水準」。では実勢はどうか。東日本レインズが2025年度に実際に成約した首都圏中古マンションの集計では、平均は217円/㎡・月。ところが築年別に見ると、驚くべき構造が見えます。

築年別・修繕積立金の実勢(円/㎡・月) 111 築3年 154 築5年 203 築10年 231 築11〜20年 239 築21〜30年 ガイドライン平均252〜338円のゾーン
築浅の積立金はガイドライン目安の半分以下。「安さ」は段階増額方式の初期値にすぎない。
出典:東日本レインズ「REINS TOPIC 首都圏中古マンションの管理費・修繕積立金(2025年度)」より作成
出典:公益財団法人東日本不動産流通機構「REINS TOPIC 首都圏中古マンションの管理費・修繕積立金(2025年度)」(2026年5月公表)
https://www.reins.or.jp/pdf/trend/rt/rt_202605.pdf

築3年の平均111円/㎡は、目安平均(252〜338円)の半分以下。「新築・築浅の積立金は安く設定され、その後じわじわ上がっていく」ことが、市場データにそのまま刻まれています。


「段階増額方式」の罠

積立方式には、完成時から一定額の均等積立方式と、最初は安く5年ごと等に引き上げる段階増額積立方式があります。問題は後者。分譲時に売りやすくするため初期の積立金は安く設定されます。築浅111円/㎡という実勢値が動かぬ証拠です。

ところが値上げには総会決議が必要で、住民の反対で否決されるケースが後を絶ちません。値上げできないまま時間が過ぎ、気づけば数億円の積立不足——「限界マンション」への入り口です。国交省もこの構造をはっきり警告しています。

「段階増額積立方式(中略)は、増額しようとする際に区分所有者間の合意形成ができず修繕積立金が不足する事例も生じていることに留意が必要です。将来にわたって安定的な修繕積立金の積立てを確保する観点からは、均等積立方式が望ましい方式といえます。」
出典:国土交通省・前掲ガイドライン

令和6年改定では、段階増額方式について「初期額は均等方式の基準額の0.6倍以上、最終額は1.1倍以内」という考え方も示されました。初期額が均等換算の6割を切る急勾配の値上げ計画は、国も「実現性に乏しい」と見ているということです。

危険物件の典型:計画上は5年ごとに値上げのはずが、10年間据え置かれている物件。現在の金額だけでなく「今後どこまで上がる計画か」「過去の値上げは計画通り決議されてきたか」を必ず確認してください。


購入前に確認すべき書類は3つ

①重要事項調査報告書——管理会社発行。積立金の残高・滞納額・管理組合の借入の有無を確認。借入がある=積立不足を借金で埋めた過去がある、ということ。

②長期修繕計画書——直近5年以内に見直されているか。国交省も「5年程度ごと」の見直しを推奨しています。10年以上前の計画のままの物件は、工事費高騰が反映されておらず絵に描いた餅です。

③総会議事録(直近2〜3年分)——値上げ議案の否決、修繕を巡る紛糾、理事のなり手不足。管理組合が機能しているかは議事録を読めば分かります。


まとめ:積立金は「未来の価格」を映す鏡

・積立金の安さは魅力ではなくリスク。国交省も公式に警告

・物差しは2つ:ガイドライン目安(平均252〜338円/㎡・月)と市場実勢(平均217円/㎡・月)

・築浅の安さ(築3年平均111円/㎡)を額面通り受け取らない

・書類3点セット(重要事項調査報告書・長期修繕計画書・総会議事録)を購入前に必ず取り寄せる

修繕積立金を読み解く力は、そのまま「10年後も価値が落ちない物件」を見抜く力です。価格と間取りの手前で、まず健康診断書を読む。この習慣が、数百万円の差になって返ってきます。

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