「資産性の高いマンションってどんな物件ですか?」——購入相談で、ほぼ毎回受ける質問です。
多くのメディアは「立地が大事」「管理が大事」と答えますが、それでは何も言っていないのと同じです。
駅から何分までなら合格なのか。総戸数は何戸以上が良いのか。判断に使えるのは、常に「数字」です。
このコラムでは、実務で使っている資産性の判断基準を、公的データの裏付けとともにそのまま公開します。
先に断っておくと、すべての条件を満たす物件は、まず市場に出てきません。大切なのは、満点の物件を探すことではなく、「どの条件なら妥協してよいか」を見極めることです。
前提:市場はすでに「二極化」している
東日本レインズの統計によると、2025年の首都圏中古マンションの成約㎡単価は82.98万円で13年連続の上昇。この13年で117.3%、つまり2倍以上に上昇しています。ただし、この「首都圏平均」は郊外を含んだ数字です。東京都区部(23区)だけで見ると、成約㎡単価130.75万円・平均価格7,401万円。新築マンションなら23区平均は1億3,613万円(都心6区は1億9,503万円)に達しており、5,000万円台では23区の物件は買えないのが実勢です。
ただし中身を見ると景色が変わります。2025年の成約㎡単価の前年比は、東京都区部が+13.2%である一方、埼玉県−1.3%、千葉県−1.3%、神奈川県のうち横浜・川崎を除く地域は−3.9%と、下落に転じました。
https://www.reins.or.jp/pdf/trend/sf/sf_2025.pdf
出典(新築):株式会社不動産経済研究所「首都圏 新築分譲マンション市場動向 2025年」(2026年1月公表)
https://www.fudousankeizai.co.jp/share/mansion/654/ss2025.pdf
「マンションは上がっている」はもう正確ではありません。上がり続けるマンションと、既に下がり始めたマンションに分かれた。これが現在地です。だからこそ、これから買う人には「どちら側の物件か」を見極める基準が必要になります。
資産性を決める4つの軸
資産性は、突き詰めると①立地(駅距離×駅力)②規模(総戸数)③ブランド(分譲主)④管理(修繕計画)の4つで決まります。
順番にも意味があります。後から変えられないものほど優先度が高い。立地と規模は一生変わりません。管理は住民の努力で改善し得ます。だからこそ、立地と規模で妥協した物件は、後からどうにもならないのです。
① 立地:駅徒歩7分以内。理想は5分以内
結論は徒歩7分以内です。理想は5分以内。
中古マンション市場では、検索サイトの絞り込み条件が「5分以内」「7分以内」「10分以内」で区切られています。つまり徒歩8分の物件は、「7分以内」で検索する買い手の画面にそもそも表示されません。資産性とは、言い換えれば「将来の買い手の多さ」。検索にヒットしない物件は、その時点で買い手の母数を失っています。
なお「徒歩◯分」は表示ルール上、道路距離80mを1分として計算し、1分未満は切り上げ。信号待ちや坂道は考慮されません(不動産の表示に関する公正競争規約施行規則)。表示上の7分と体感の7分は別物なので、必ず自分の足で確認してください。
もう一つ重要なのが「駅力」です。複数路線・急行停車・駅前商業集積(再開発含む)。先ほどの二極化データで上がっているのは都区部と横浜・川崎、つまり駅力と都心アクセスに優れたエリアです。駅力の条件が揃った街は、市況変動があっても需要が途切れません。
② 規模:総戸数200戸以上。最低ラインは100戸
これは感覚論ではありません。規模のスケールメリットは公的データにはっきり表れています。東日本レインズが2025年度に成約した首都圏中古マンションを規模別に集計したデータでは、㎡当たりの修繕積立金(月額)は次の通りです。
| 総戸数 | 修繕積立金(円/㎡・月) |
|---|---|
| 50戸未満 | 245円 |
| 50〜99戸 | 216円 |
| 100〜149戸 | 202円 |
| 150〜199戸 | 197円 |
| 200戸以上 | 197円 |
小規模マンションの修繕負担は、大規模マンションより約2割以上重い。国土交通省の修繕積立金ガイドラインも「建物の規模が大きくまとまった工事量になるほど、施工性が向上し、修繕工事の単価が安くなる傾向があります」と明記しています。
規模のメリットはコストだけではありません。大規模物件は売買事例が豊富で、適正相場が形成されやすく、買い手も銀行も評価しやすい。年間数戸しか取引のない小規模マンションは相場の「ものさし」が育たず、売るときに査定がブレ、流動性が下がります。大規模マンションは、それ自体が一つの「市場」になるのです。
③ ブランド:財閥系・電鉄系は「売るとき」に効く
分譲主のブランドは、住んでいる間はほぼ関係ありません。効いてくるのは売却のときです。大手デベロッパーの物件は中古市場で「安心の記号」として機能し、明確にプレミアムが付きます。
ただし優先順位は立地・規模より下。「無名デベロッパーの駅徒歩3分」と「財閥系の駅徒歩12分」なら、迷わず前者です。ブランドは加点要素であって、立地の減点を埋めるものではありません。
④ 管理:買う前に「管理の通信簿」を見る
「マンションは管理を買え」は精神論ではなく、確認すべき書類が決まっています。長期修繕計画(5年以内の見直しが目安)、修繕積立金の水準(国交省ガイドラインの目安と比較)、総会議事録(値上げ否決の履歴)。詳しくは別コラム「修繕積立金で分かる、危険なマンションの見分け方」で解説しています。
まとめ:全部は揃わない。だから「捨てる条件」を決める
実務での優先順位:立地 > 規模 > 管理 > ブランド
・駅徒歩7分以内(理想5分)×駅力(複数路線・急行・再開発)
・総戸数200戸以上(最低100戸)
・修繕計画と積立金はガイドライン目安と比較
・ブランドは加点要素。立地の代わりにはならない
これらは「将来売る・貸す」前提の物差しです。永住前提で暮らしの満足度を最優先するなら、優先順位が変わっても構いません。大切なのは、「自分は何を基準に選んだのか」を説明できる状態で買うこと。なんとなく買った物件は、売るときも、なんとなくの結果しか返ってきません。

