「ローンがまだ20年以上残っているのに、売れるんですか」。
売却相談の最初によく聞かれる質問です。
答えは、売れます。
住宅ローンが残ったまま売却する人のほうが、むしろ多数派です。
結論から言うと、条件は一つだけです。
引渡しの日に、売却代金と手持ちの現金でローンを全額返せること。
売却価格がローン残高を上回る「アンダーローン」なら何の問題もなく、下回る「オーバーローン」なら、差額をどう埋めるかを先に決めておく必要があります。
■ 30秒で分かる結論
・ローンが残っていても、引渡し時に全額返せれば売却できる
・売却代金で返す流れが一般的で、決済日に返済と抵当権の抹消を同時に行う
・売却価格が残債を下回るなら、差額を現金で用意するか、住み替えローンを使う
・まずは残高と、いま売れる価格を数字で出し、どちらに当てはまるかを確認する
ローンが残っていても売れる仕組み
住宅ローンを借りると、その物件には銀行の抵当権が設定されます。
抵当権が付いたままの物件を買う人はいないので、売るときはこれを外す必要があります。
抵当権を外すには、ローンを全額返さなければなりません。
ここで疑問になるのが、まだお金が入っていないのにどうやって返すのか、という点です。
実務では、買主から代金を受け取る決済の日に、その代金でローンを返し、同じ日に抵当権を外す手続きをします。
売主、買主、双方の銀行、司法書士が同じ場で手続きを進めるので、売主が先に自分のお金でローンを返す必要はありません。
決済日の流れ
・買主の銀行から、買主の住宅ローンが実行される
・売主は売却代金を受け取り、その場で自分の住宅ローンを一括返済する
・司法書士が、売主の抵当権の抹消と、買主への所有権の移転を同時に登記する
・売主は鍵を引き渡す
まず確認する2つの数字
売れるかどうかは、2つの数字の比較で決まります。
銀行から届く返済予定表か、ネットバンキングで確認できます。売却予定の時期の残高を見てください。
査定額ではなく、成約事例から見た現実的な価格です。売却費用を引いた手取りで考えます。
この2つを比べて、手取りがローン残高を上回るか下回るかで、取るべき行動が変わります。
手取りの計算方法はマンション売却の手取りはいくら残るかで詳しく書いています。
| 状態 | 意味 | 売却の進め方 |
|---|---|---|
| アンダーローン | 手取りがローン残高を上回る | そのまま売却できる。差額は手元に残る |
| オーバーローン | 手取りがローン残高を下回る | 差額を埋める方法を決めてから売り出す |
首都圏のマンションは、ここ10年以上価格が上がり続けたため、数年前に買った物件でもアンダーローンになるケースが多くなっています。
逆に、オーバーローンになりやすいのは、購入から日が浅く、頭金をほとんど入れずにフルローンで買った場合や、郊外で価格が上がっていない物件です。
オーバーローンのときの4つの選択肢
1. 差額を手持ちの現金で払う
最もシンプルな方法です。
決済の日に、売却代金に加えて不足分の現金を用意し、ローンを完済します。
貯蓄で足りる額なら、これが最も負担の少ない方法です。
2. 住み替えローンで、新居のローンに上乗せする
住み替えの場合、売却で返しきれない残債を新居のローンにまとめて借りる住み替えローンがあります。
手元の現金を使わずに住み替えられる一方で、借入額が新居の価格を上回るため、審査は通常より厳しくなります。
新居のローンがその分だけ重くなるので、返済計画は慎重に立てる必要があります。
3. 売却時期をずらす
ローンは返済が進むほど残高が減ります。
売却を急ぐ理由がないなら、残高と相場の差が縮まるまで待つのも合理的な判断です。
ただし、待っている間に相場が下がれば、差は広がります。
待つ判断をするなら、何年後にいくらの残高になるかを返済予定表で確認しておきます。
4. 任意売却
返済が滞り、手持ちの現金でも差額を埋められない場合、銀行の同意を得て、残債が残る状態で売却する任意売却という方法があります。
ただし、信用情報に影響が出るなど、通常の売却とは別物です。
返済が苦しくなりそうだと感じたら、延滞する前に銀行や専門家に相談してください。
延滞する前なら、選べる手段は多く残っています。
住み替えでは「売る順番」も資金計画に効く
住み替えでローンが残っている場合、今の家を先に売るか、次の家を先に買うかで、必要な資金が変わります。
先に買うと、一時的に2つのローンを抱えることになり、銀行の審査では今のローンも返済負担として見られます。
先に売れば残債の問題は先に片付きますが、仮住まいが必要になることがあります。
判断の考え方は住み替えは「売却先行」か「購入先行」かで整理しています。
結論:残債は「売れない理由」ではなく「計算する数字」
ローンが残っている家を売るときの手順
・返済予定表で、売却予定時期のローン残高を確認する
・成約事例から現実的な売却価格を出し、売却費用を引いた手取りを計算する
・手取りが残高を上回れば、そのまま売り出してよい
・下回るなら、現金・住み替えローン・時期の見直しのどれで埋めるかを先に決める
ローンが残っていることは、売却をあきらめる理由にはなりません。
残高と手取りの2つの数字を出せば、取るべき行動ははっきり決まります。

