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購入編

政策金利1.25%時代の住宅ローン——変動か固定か、判断基準は3つ

政策金利1.25%時代の住宅ローン——変動か固定か、判断基準は3つ
この記事の監修者
南 和希
株式会社スピアード 代表取締役
宅地建物取引士 / 2級FP技能士

1999年、神奈川県横浜市生まれ。
新卒で大手不動産会社に入社後、営業部内トップセールスを達成。
3年の実績を経て独立し、株式会社スピアードを設立。
代表プロフィールを見る →

売買仲介・投資用不動産・中古不動産の仕入れ再販・リノベーションなど、不動産業界の幅広い領域で実務経験を持つ。
自身でも不動産の購入を3回、売却を2回、リノベーションを1回経験した実践派。
現在はメディア取材・自社サービスが計6媒体に掲載されている。

2026年9月、日本銀行は政策金利を1.25%程度に引き上げました。
フラット35の10月の金利は3.83%と、現行制度で過去最高の水準です。
「今から借りるなら固定にすべきか」という相談が、ここ数か月で一気に増えました。

先に結論を言います。
変動か固定かは、金利の予想で決めるものではありません。
「金利が上がっても家計が耐えられるか」「何年で売るか」「余剰資金をどう使えるか」の3つで決まります。
この3つに答えられれば、どちらを選んでも後悔はしません。

■ 30秒で分かる結論
 ・現在の変動と固定の金利差は約2.5%。この差は、変動金利が多少上がっても簡単には埋まらない
 ・変動を選んでよいのは「変動金利+2%」で計算しても返済が回る人
 ・10年以内に売る・住み替える可能性が高いなら、変動のほうが合理的
 ・返済に余裕がなく、長く住み続ける前提なら、固定で金利リスクを手放す


今の金利水準を確認する

日本銀行は2025年12月に政策金利を0.75%、2026年6月に1.0%、同年9月に1.25%へと段階的に引き上げてきました。
変動金利は、政策金利に連動する短期プライムレートを基準に決まるため、利上げのたびに少しずつ上がります。

金利タイプ2026年10月の水準(目安)
変動金利(メガバンクの新規借入)年1.2〜1.5%台
10年固定(メガバンク)年3.6〜4%台
フラット35(全期間固定・融資率9割以下)年3.83%

注目すべきは、変動と固定の差です。
長期金利が先に上がったため、固定金利は変動金利の約3倍の水準になっています。
固定を選ぶということは、この差額を「金利が上がらない安心」のための保険料として払うということです。

出典:日本銀行「金融市場調節方針の変更について」(2026年9月18日)
https://www.boj.or.jp/mopo/mpmdeci/mpr_2026/k260918a.pdf
出典:住宅金融支援機構「フラット35 最新の金利情報」
https://www.simulation.jhf.go.jp/flat35/kinri/index.php/rates/top
メガバンクの金利は各行の2026年10月の公表値をもとに作成。優遇条件により異なる。

試算:変動金利はどこまで上がると固定に負けるのか

7,000万円を35年、元利均等返済で借りるケースで計算しました。
まずは金利ごとの毎月の返済額です。

金利毎月の返済額35年間の総返済額
1.2%(現在の変動の目安)約20.4万円約8,576万円
2.0%約23.2万円約9,739万円
3.2%(変動+2%)約27.7万円約1億1,645万円
3.83%(フラット35)約30.3万円約1億2,719万円

変動1.2%と固定3.83%では、毎月約9.9万円、10年で約1,184万円の差がつきます。
では、変動金利が上がり続けたらどうなるか。
金利が毎年少しずつ上がるシナリオで、35年間の総返済額を比べました。

35年間の総返済額(7,000万円・35年・元利均等) 変動:1.2%のまま 8,576万円 変動:毎年+0.25%、 3.83%で頭打ち 1億1,492万円 固定:3.83% 1億2,719万円 変動:毎年+0.5%、 5.0%まで上昇 1億3,406万円 変動が固定に負けるのは「毎年0.5%ずつ、5%まで上がり続ける」レベル 年1回金利を見直して返済額を再計算した単純試算。5年ルール・125%ルール、手数料、住宅ローン控除は考慮していない
変動金利が毎年上がり続け、最終的に固定と同じ3.83%に達しても、総返済額は変動のほうが約1,200万円少ない。

ポイントは、変動金利が最終的に固定と同じ3.83%まで上がっても、総返済額は変動のほうが約1,200万円少ないことです。
金利が低い最初の数年間に元本が多く減るため、後から金利が上がっても利息の対象になる残高が小さくなっているからです。
変動が固定に負けるのは、毎年0.5%ずつ、5%まで上がり続けるような急激な上昇が続いた場合です。

もちろん、これは将来の金利を予想した数字ではありません。
言えるのは、現在の金利差を前提にすると、固定の「保険料」はかなり高いということです。


判断基準1:「変動金利+2%」で家計が回るか

変動を選ぶ条件はシンプルです。
今の変動金利に2%を足した金利で返済額を計算し、それでも生活が成り立つかどうか。
7,000万円・35年なら、1.2%で月20.4万円の返済が、3.2%では月27.7万円になります。
月7万円以上の増加を、教育費や車の買い替えと重なる時期でも吸収できるかを確認してください。

「5年ルール」「125%ルール」は安全装置ではない

多くの銀行の変動金利には、返済額を5年間据え置き、見直し時も前回の125%までしか上げないルールがあります。
ただし、これは返済額の急増を先送りしているだけで、利息が減るわけではありません。
金利が大きく上がると、返済額のうち元本に回る部分が減り、最終回に残った元本をまとめて払う必要が出ることもあります。
ネット銀行を中心に、このルールがない商品もあるので、契約前に必ず確認してください。

判断基準2:何年後に売るか(出口から逆算する)

住宅ローンは、売却すれば一括で返済します。
つまり、ローンの期間は35年でも、実際に金利を払うのは「住んでいる期間」だけです。

先ほどの試算で10年後のローン残高を比べると、変動1.2%なら約5,290万円、固定3.83%なら約5,841万円です。
同じ返済期間でも、金利の低い変動のほうが元本が約550万円多く減っています。
10年以内に住み替える可能性が高い人にとって、35年先の金利上昇に備えて高い保険料を払う合理性は低いと言えます。
住み替えの進め方は、別コラム「住み替えは売却先行か購入先行か」でも整理しています。

判断基準3:余剰資金を「繰上返済」に回せるか

変動を選ぶ人の最大の武器は、手元資金です。
金利が上がったときに繰上返済で残高を減らせる資金があれば、金利上昇の影響を自分でコントロールできます。
逆に、頭金も貯蓄もほとんどない状態で変動を選ぶと、金利が上がったときに打つ手がありません。

インフレの局面では、現金の価値は目減りします。
低い金利で借りて、手元資金は生活防衛資金と運用に回し、金利が一定水準を超えたら繰上返済に切り替える。
変動金利は、この「選択肢を持ち続ける」戦略と組み合わせてこそ意味を持ちます。


結論:迷ったら、3つの質問に答える

変動を選んでよい人

・変動金利+2%でも返済比率に余裕がある

・10年以内に売却・住み替えの可能性がある

・金利上昇時に繰上返済できる手元資金がある

固定を選ぶべき人

・返済比率がすでに高く、月数万円の増加に耐えられない

・その家に長く住み続ける前提で、金利の動きを気にせず暮らしたい

・手元資金が少なく、金利上昇時の打ち手がない

金利は誰にも当てられません。
当てられないものに賭けるのではなく、外れたときにどうなるかを先に決めておく。
それができていれば、変動でも固定でも正解です。
銀行の選び方と手数料の比べ方は、別コラム「住宅ローンの賢い選び方」で扱っています。

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