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購入編

住宅ローンはいくらまで借りていいか——「借りられる額」と「返せる額」は違う

住宅ローンはいくらまで借りていいか——「借りられる額」と「返せる額」は違う
この記事の監修者
南 和希
株式会社スピアード 代表取締役
宅地建物取引士 / 2級FP技能士

1999年、神奈川県横浜市生まれ。
新卒で大手不動産会社に入社後、営業部内トップセールスを達成。
3年の実績を経て独立し、株式会社スピアードを設立。
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売買仲介・投資用不動産・中古不動産の仕入れ再販・リノベーションなど、不動産業界の幅広い領域で実務経験を持つ。
自身でも不動産の購入を3回、売却を2回、リノベーションを1回経験した実践派。
現在はメディア取材・自社サービスが計6媒体に掲載されている。

「年収800万円なら、いくらまで借りられますか」。
購入相談で最も多い質問の一つです。
ただ、本当に考えるべきは「いくら借りられるか」ではなく「いくらまでなら返し続けられるか」です。

結論から言うと、年収800万円の方が銀行の審査で借りられる額は5,600万円前後です。
一方で、金利上昇や教育費まで見込んで無理なく返せる額は、3,800万〜4,600万円程度になります。
この1,000万円以上の差をどう扱うかが、住宅購入で最も大事な判断です。

■ 30秒で分かる結論
 ・銀行の審査は「額面年収」と「審査金利(3〜4%程度)」で上限を決める
 ・審査の上限は、実際の返済額ではなく、金利が上がったときの返済に耐えられるかで決まっている
 ・返せる額の目安は、ローン返済と管理費・修繕積立金の合計が手取りの30%以内
 ・資産性の高い物件で、売却で完済できる見込みがあるなら、上限側を取る判断もある


銀行が見ている「返済負担率」と「審査金利」

銀行の審査で中心になるのが返済負担率です。
年間の返済額が、額面年収の何%を占めるかを示す数字で、手取りではなく額面で計算します。
フラット35の基準は、年収400万円未満なら30%以下、400万円以上なら35%以下です。
民間の銀行も、おおむね30〜40%程度を上限にしているところが多いです。

ここで重要なのが、計算に使う金利です。
銀行は、実際に適用する金利(変動なら1%台)ではなく、3〜4%程度の「審査金利」で返済額を計算します。
将来金利が上がっても返済を続けられるかを見ているからです。

年収800万円・返済負担率35%の場合借入上限(35年・元利均等)
審査金利3.0%約6,060万円
審査金利3.5%約5,650万円
審査金利4.0%約5,270万円

審査金利3.5%なら、年収800万円で借りられる上限は約5,650万円、年収の約7倍です。
車のローンやカードのリボ払い、奨学金などの返済があれば、その分だけ上限は下がります。

参考:住宅金融支援機構「フラット35」の融資要件(総返済負担率の基準)
試算は元利均等返済、ボーナス払いなしで計算

「返せる額」は手取りと管理費から逆算する

審査の上限は、銀行が貸せる金額です。
家計が回るかどうかは、別の物差しで考える必要があります。

実務で使っている目安は、ローン返済と管理費・修繕積立金の合計が手取りの30%以内、上限でも35%以内です。
マンションは、ローンのほかに管理費・修繕積立金が毎月3万〜5万円かかります。
これを住居費に含めずに計算すると、実際の負担を過小評価してしまいます。

年収800万円(手取り約600万円)住居費の上限(月)うちローン返済借入額の目安(金利1.2%)
手取りの30%15.0万円11.0万円約3,770万円
手取りの35%17.5万円13.5万円約4,630万円

管理費・修繕積立金を月4万円として計算しています。
手取りの30%で考えると借入の目安は約3,770万円、年収の約4.7倍です。
審査の上限5,650万円との差は、約1,900万円あります。

年収800万円の「借りられる額」と「返せる額」 返せる額(手取り30%) 約3,770万円 返せる額(手取り35%) 約4,630万円 借りられる額(審査上限) 約5,650万円 返せる額は金利1.2%・管理費等月4万円、審査上限は審査金利3.5%・返済負担率35%で試算(35年・元利均等)
銀行が貸せる額と、家計が無理なく返せる額の間には1,000万円以上の差がある。

金利が2%上がったときに耐えられるか

変動金利で借りる場合は、金利上昇への耐性も確認します。
3,770万円を金利1.2%で借りた場合の返済額は月11.0万円ですが、金利が3.2%に上がると月約14.9万円になります。
管理費等を含めた住居費は手取りの約38%です。
苦しくはなりますが、家計が破綻する水準ではありません。

これが審査上限の5,650万円を借りた場合、金利1.2%で月16.5万円、3.2%では月22.4万円です。
管理費等を含めると月26万円を超え、手取りの半分以上が住居費に消えます。
変動か固定かの考え方は、別コラム「政策金利1.25%時代の住宅ローン」で詳しく扱っています。


上限側を取ってよいケース:出口から逆算できるとき

ここまで読むと「審査上限まで借りるのは危険」と感じるかもしれません。
ただ、一律にそうとは言えません。
次の条件がそろう場合は、返せる額の目安を超えて借りる判断もあり得ます。

1
資産性の高い物件であること

駅近、大規模、管理良好など、将来も買い手が多く、売却価格が大きく崩れにくい物件。

2
売却すればローンを完済できる見込みがあること

数年後の想定売却価格が、そのときのローン残高を上回る。返済が苦しくなったら売って身軽になる、という選択肢を常に持てる状態。

3
収入の伸びや共働きの継続に、根拠があること

昇給の見通しや、夫婦の就業継続が現実的であること。ペアローンを組む場合のリスクは、別コラム「ペアローンは危険か」で整理しています。

逆に、資産性の低い物件で審査上限まで借りるのは避けるべきです。
売っても残債が残る物件では、返済が苦しくなったときに逃げ道がありません。
借入額の上限は、年収だけでなく、物件の出口とセットで決めるものです。


結論:借入額は「家計」と「出口」の2つで決める

借入額の決め方

・審査上限は、額面年収×返済負担率35%を審査金利3〜4%で割り戻した額(年収の6.5〜7.5倍程度)

・家計の目安は、ローン返済+管理費・修繕積立金が手取りの30%以内(上限35%)

・変動金利なら、金利が2%上がっても家計が回るかを確認する

・上限側を取るなら、売却で完済できる資産性の高い物件に限る

銀行は「貸せる額」を教えてくれますが、「借りるべき額」は教えてくれません。
それを決めるのは、自分の家計と、買う物件の出口です。
物件を探し始める前に、まず自分にとっての上限額を数字で決めてください。

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