自分が住むマンションは、原則として個人名義で買うほうが有利です。
住宅ローン控除と、売却時の3,000万円特別控除が使えるのは個人だけだからです。
法人名義が選択肢になるのは、賃貸に出す物件や役員社宅として使う物件で、法人の所得と保有期間の見通しがはっきりしている場合です。
■ 30秒で分かる結論
・住宅ローン控除と3,000万円特別控除は個人の制度で、法人には使えない
・法人の借入は住宅ローンではなく事業性の融資になり、金利と期間の条件が変わる
・個人の売却益は所有5年超で20.315%、5年以下で39.63%の分離課税
・法人は売却益が他の利益と合算され、法人税等の対象になる
・役員社宅は会社が経費にできる一方、役員から一定額以上の家賃を取る必要がある
個人と法人で何が違うのか
違いは、使える税制、借入の種類、売却時の課税の3つです。
次の表で主な違いをまとめます。
| 項目 | 個人名義 | 法人名義 |
|---|---|---|
| 住宅ローン控除 | 使える(自分が住む場合) | 使えない |
| 借入 | 住宅ローン(本人・家族が住む住宅に限る) | 事業性の融資 |
| 購入費用の経費化 | 自宅は経費にならない | 建物部分は減価償却で経費にできる |
| 売却時の課税 | 譲渡所得として分離課税(長期20.315%・短期39.63%) | 他の利益と合算して法人税等 |
| 3,000万円特別控除 | 使える(自分が住んでいた家の売却) | 使えない |
自宅を法人名義で買うと何を失うか
失うのは、住宅ローン控除と3,000万円特別控除の2つです。
住宅ローン控除の根拠となる租税特別措置法41条は「個人が」住宅を取得した場合の制度で、法人は対象外です。
売却時に譲渡益から最大3,000万円を差し引ける特例(同法35条)も、個人が自分の住まいを売る場合の制度です。
都心のマンションは、購入から数年で数千万円の値上がりが出ることもあります。
個人名義なら3,000万円までの譲渡益に税金がかからないのに対し、法人名義ではその利益がそのまま課税対象になります。
自宅を法人で持つと、この差が出口で最も大きく効きます。
法人で買うメリットは何か
メリットは、建物部分を減価償却で経費にできることと、役員社宅として使えることです。
鉄筋コンクリート造の住宅の法定耐用年数は47年で、中古の場合は簡便法で耐用年数を短くできます。
| 中古マンション(RC造)の築年数 | 簡便法の耐用年数 | 計算 |
|---|---|---|
| 築20年 | 31年 | (47−20)+20×20% |
| 築30年 | 23年 | (47−30)+30×20% |
| 築47年以上 | 9年 | 47×20%(1年未満切り捨て) |
購入後のリノベーション費用(資本的支出)が取得価額の50%を超える場合は、原則として簡便法は使えません。
経費にできるのは建物部分だけで、土地部分は減価償却できません。
都心のマンションは価格に占める土地の割合が高いため、経費にできる額は思ったより小さくなることがあります。
減価償却した分だけ帳簿上の取得費が下がるので、売却時の利益はその分大きく計算されます。
役員社宅にする場合の注意点は
役員社宅にする場合、会社は役員から一定額以上の家賃を受け取る必要があります。
受け取る家賃が国税庁の定める「賃貸料相当額」より低いと、差額は役員の給与として課税されます。
賃貸料相当額の計算は、住宅の広さで変わります。
鉄筋コンクリート造では床面積99㎡以下が小規模住宅で、区分所有の場合は共用部分を按分して加えた面積で判定します。
小規模住宅以外で会社が所有する場合の月額は、建物の固定資産税の課税標準額×10%と敷地の課税標準額×6%を合計し、12で割った額です。
床面積が240㎡を超えるなど豪華社宅と判定されると、この計算は使えず、通常の家賃相当額が基準になります。
売却するときの税金はどう違うか
個人は譲渡所得として他の所得と分けて課税され、法人は他の利益と合算して課税されます。
個人の税率は、売った年の1月1日時点で所有期間が5年を超えていれば20.315%、5年以下なら39.63%です。
法人には所有期間による税率の差はなく、売却益は本業の利益と合わせて法人税等の対象になります。
中小法人の法人税率は、年800万円以下の所得部分が15%(特例)、超える部分が23.2%です。
このほか住民税と事業税がかかります。
短期で売る予定がある場合や、法人に赤字があって利益と相殺できる場合は、法人名義が有利になることがあります。
逆に、自分が住んで長く持つ物件は、3,000万円特別控除が使える個人名義が有利です。
中小法人の軽減税率15%は、2027年3月31日までに開始する事業年度が対象の特例です。
その後の扱いは税制改正で決まります。
法人で購入するかどうかは、必ず顧問税理士と試算してから決めてください。
どちらで買うべきか、判断の基準は
住宅ローン控除と3,000万円特別控除の2つを使えることが、法人名義のメリットを上回るのが一般的です。
個人の所得が高く税率が高い場合や、5年以内に売る可能性がある場合は、法人名義を検討する価値があります。
保有中の経費化だけで判断せず、売却時に3,000万円特別控除が使えないことまで含めて比べます。
よくある質問
法人名義でも住宅ローンは組めますか
住宅ローンは本人や家族が住む住宅のための融資で、法人名義の購入には事業性の融資を使うのが一般的です。金利や期間、審査の基準は住宅ローンと異なります。
法人で買ったマンションに社長が住めますか
役員社宅として住めます。会社は国税庁の基準で計算した賃貸料相当額以上の家賃を役員から受け取る必要があります。
法人で売っても3,000万円控除は使えますか
使えません。3,000万円特別控除は個人が自分の住まいを売る場合の制度です。
個人で買ったマンションを後から法人に移せますか
移せますが、個人から法人への売却として扱われ、個人に譲渡所得の課税、法人に登録免許税や不動産取得税などがかかります。事前に税理士と試算してください。
結論:住むなら個人、運用するなら出口まで計算して決める
名義を決める前に確認すること
・自分が住むのか、賃貸・社宅にするのか
・住宅ローン控除と3,000万円特別控除の効果はいくらか
・保有期間は5年を超えるか
・建物部分の減価償却でいくら経費にできるか
・売却時に個人と法人でいくら税金が違うか
名義の選び方で、保有中と出口の税金は数百万円単位で変わります。
物件の価格だけでなく、名義と出口を含めた手取りで判断してください。
税金の最終判断は税理士の確認が必要ですが、名義ごとの手取りの比較は物件ごとに個別にお手伝いします。

