「ペアローンって危険なんですよね?」——SNSで「ペアローン破綻」という言葉が独り歩きし、この質問が本当に増えました。
結論から言います。ペアローンは道具です。道具に危険も安全もありません。危険なのは、リスクを理解せずに限度額まで借りる使い方です。
背景から整理しましょう。東日本レインズの統計では、2025年の首都圏中古マンションの成約価格は平均5,200万円で13年連続の上昇。東京都区部に限れば平均7,401万円に達し、成約件数の1割以上を1億円超の物件が占める市場になりました。この価格水準を単独の収入で買える世帯は限られます。都心部において、ペアローンは「攻めた選択肢」ではなく事実上の標準装備になりつつあるのです。
https://www.reins.or.jp/pdf/trend/sf/sf_2025.pdf
ペアローンとは何か:3つの方式の違い
夫婦で住宅ローンを組む方法は3種類あります。違いが最も出るのは「住宅ローン控除」と「団信」です。
| 方式 | 契約本数 | 住宅ローン控除 | 団信 |
|---|---|---|---|
| ペアローン | 2本(互いに連帯保証人) | 2人分 | 2人とも加入 |
| 連帯債務 | 1本(2人とも債務者) | 2人分 | 原則1人(フラット35は例外あり) |
| 連帯保証 | 1本(1人が債務者) | 1人分 | 1人 |
メリット:借入額・控除・団信
①借入可能額を最大化できる——単独では6,000万円が上限の世帯でも、夫婦それぞれの収入で審査すれば1億円に届く。前述の市場価格を前提にすると、これが最大の導入理由です。
②住宅ローン控除を2人分使える——年末残高の0.7%の控除を夫婦それぞれが受けられます。控除は各自が納めている税金の範囲内なので、2人で分ければ世帯として使い切りやすく、13年合計で単独ローンより数百万円単位の差がつくこともあります。
③団信に2人とも加入できる——ただし注意。万一の際に消えるのは「その人の契約分」だけで、残された側のローンはそのまま残ります。この弱点を埋めるものとして、近年はどちらかに万一のことがあれば2人分の債務が全額消える「ペアローン連生団信」を扱う金融機関も増えました。検討の価値は十分あります。
リスクの本丸は「離婚」と「収入減」
「諸費用が2本分」は正直、大した問題ではありません。本当のリスクは次の2つです。
① 離婚しても、ローンと家は分けられない
厚生労働省の人口動態統計によると、日本では年間およそ18万組が離婚しています。婚姻件数が年間50万組弱ですから、他人事の数字ではありません。
https://www.mhlw.go.jp/toukei/list/81-1.html
そして離婚しても、それぞれのローン契約と連帯保証は自動的には解消されません。
「家は売ればいい」が通用するのは、残債を下回らない価格で売れる物件だけです。ここが物件選びと直結します。
② 収入2人分が「前提」の返済計画になる
産休・育休、転職、病気。どちらかの収入が一時的に落ちることは、35年〜50年という返済期間では普通に起きます。2人の収入をフルに使って限度額まで借りていると、この「普通に起きること」で家計が詰みます。
正しい組み方:3つのルール
ルール1:返済負担率は「1人の収入が7割になっても回る」水準に
限度額いっぱいではなく、世帯手取りに対する返済割合を25%前後に収めておくと、収入変動への耐性が大きく変わります。
ルール2:持分割合は「負担割合」と一致させる
国税庁は、共働き夫婦が住宅を購入した際に資金の負担割合と登記持分が異なる場合、その差額は贈与として贈与税の課税対象になり得ることを明示しています。基本中の基本ですが、実務で最もミスが多いポイントです。
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/zoyo/4411.htm
ルール3:「売れる物件」を買う
最大のリスクヘッジは、実は物件選びです。万一関係や家計が変わっても、残債を上回る価格で売れる物件なら、いつでもリセットできます。首都圏の成約㎡単価はこの13年で117.3%上昇しましたが、2025年は都区部+13.2%に対し埼玉・千葉・神奈川の一部はマイナス。「買った瞬間から出口が細る物件」も現実に存在します。
まとめ
ペアローンが危険なのではありません。資産性の低い物件を、限度額まで、ペアローンで買うことが危険なのです。
・返済負担率は世帯手取りの25%前後に
・持分は負担割合どおりに登記(ズレは贈与税リスク)
・連生団信で「片方の債務しか消えない」弱点を補完
・そして何より、いつでも売れる資産性の高い物件で使うこと
夫婦それぞれの働き方やライフプランによって、ペアローン・連帯債務・単独ローンの最適解は変わります。資金計画は物件の資産性評価とセットで検証しましょう。

