マンションの住み替え理由で、いつも上位に入るのが「上の階の音」です。
しかも音の問題は、内見ではほぼ分かりません。
昼間の内見で上の階が静かでも、夜に子どもが走り回れば状況は一変します。
結論を言うと、音の性能は内見ではなく図面と仕様書で判断します。
見るべきは、床のコンクリートの厚さ(スラブ厚)、床の構造(二重床か直床か)、そしてフローリングの遮音等級です。
この3つを確認すれば、住んでからの後悔をかなりの確率で避けられます。
■ 30秒で分かる結論
・足音や飛び跳ねる音(重量床衝撃音)は、スラブ厚で決まる。目安は200mm以上
・物を落とす音や椅子を引く音(軽量床衝撃音)は、床の仕上げで決まる
・二重床は配管の自由度が高く、リフォームしやすい。ただし施工によっては音が響く
・リフォームでフローリングを張り替えるときは、管理規約の遮音等級を必ず守る
床の音は2種類。原因も対策もまったく違う
上の階から伝わる床の音は、大きく2つに分けられます。
| 種類 | 具体例 | 主に効くもの |
|---|---|---|
| 重量床衝撃音 | 子どもが走る・飛び跳ねる、大人のかかと歩き | スラブ(床のコンクリート)の厚さと、梁で囲まれた床の広さ |
| 軽量床衝撃音 | スプーンを落とす、椅子を引く、スリッパで歩く | フローリングなど床の仕上げ材の遮音性能 |
苦情になりやすいのは、圧倒的に重量床衝撃音です。
「ドン、ドン」という低い音は、床の仕上げ材を変えてもほとんど小さくなりません。
建物の骨格であるスラブの厚さで、ほぼ決まってしまうからです。
つまり、重量床衝撃音は買った後に対策のしようがない性能です。
見るポイント1:スラブ厚は200mm以上が目安
スラブ厚は、新築時のパンフレットや設計図書、管理組合が保管する竣工図で確認できます。
一般的に、200mm以上あれば一定の遮音性が期待できると言われています。
築年数の古いマンションでは150mm前後の物件もあり、音の問題が起きやすい傾向があります。
スラブ厚とあわせて見たいのが、梁で囲まれた床の面積です。
同じスラブ厚でも、大きな面積を梁なしで支える床は太鼓の皮のように振動しやすくなります。
小梁を減らして広い床をつくる工法の物件では、その分スラブ厚が厚く設計されているかを確認してください。
見るポイント2:二重床か直床か
床の構造には、コンクリートの上に直接フローリングを張る「直床」と、支持脚で床を浮かせてその上にフローリングを張る「二重床」があります。
| 二重床 | 直床 | |
|---|---|---|
| 配管・配線 | 床下に通せる。水回りの移動など間取り変更の自由度が高い | 移動が難しく、リフォームの自由度が低い |
| 音 | 施工が悪いと床下の空気層で音が響く(太鼓現象)ことがある | 遮音フローリングは足元が柔らかく、歩いたときに沈む感触がある |
| 天井高 | 床を上げる分、天井高が低くなりやすい | 天井高を確保しやすい |
音だけで比べるなら、二重床が常に有利とは言えません。
ただ、資産性の観点では二重床に軍配が上がります。
将来リフォームでキッチンや浴室の位置を変えられることは、売却時に買主の選択肢を広げるからです。
音の性能はスラブ厚で、リフォームの自由度は床の構造で見る、と分けて考えてください。
見るポイント3:フローリングの遮音等級(L値・ΔL等級)
軽量床衝撃音に効くのが、フローリングなど床材の遮音性能です。
従来は「LL-45」のようなL値で表示されていましたが、現在は床材そのものの性能を示す「ΔL等級」で表示されることが増えています。
LL-45は、ΔL等級ではおおむね「ΔLL(I)-4」に相当します。
リフォームで一番多いトラブル
中古マンションを買ってフローリングを張り替える際、管理規約で定められた遮音等級を満たさない床材を使い、下の階から苦情を受けるケースがあります。
多くのマンションでは、管理規約や使用細則で「LL-45以上」「ΔLL(I)-4以上」などの基準が決められています。
リフォームの前に必ず管理規約を確認し、管理組合への届け出を済ませてください。
カーペットや畳からフローリングへの変更を禁止しているマンションもあります。
図面以外で確認できること
図面と仕様に加えて、次の3つを確認すると精度が上がります。
騒音に関する注意喚起や、議事録での苦情の記録がないか。音の問題は議事録に残りやすい情報です。
真上がリビングか寝室かで、聞こえる音は変わります。同じ間取りが積み重なる住戸のほうが、生活時間帯の音のずれが少なくなります。
購入を本気で検討する段階なら、夕方から夜の時間帯にもう一度訪れる。売主の協力が得られれば、生活音の実態を聞いておく。
なお、隣の住戸との境の壁(戸境壁)の構造も重要です。
コンクリートの壁か、乾式の耐火遮音壁かで、話し声やテレビの音の伝わり方が変わります。
タワーマンションでは乾式壁が多く採用されているので、仕様書で壁の構造も確認しておくと安心です。
結論:音は「買った後に直せない性能」から確認する
音のチェックリスト
・スラブ厚は200mm以上か(竣工図・パンフレットで確認)
・二重床か直床か(リフォームの自由度と資産性に影響)
・管理規約の遮音等級と、リフォームの届け出ルール
・総会議事録に騒音トラブルの記録がないか
音は、住んでからでは直せない性能の代表です。
内装や設備はリフォームで新しくできますが、スラブ厚は変えられません。
価格や眺望と同じ重さで、図面の数字を確認してから判断してください。


