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購入編

マンションの火災保険の選び方——補償を削って保険料を下げる

マンションの火災保険の選び方——補償を削って保険料を下げる
この記事の監修者
南 和希
株式会社スピアード 代表取締役
宅地建物取引士 / 2級FP技能士

1999年、神奈川県横浜市生まれ。
新卒で大手不動産会社に入社後、営業部内トップセールスを達成。
3年の実績を経て独立し、株式会社スピアードを設立。
代表プロフィールを見る →

売買仲介・投資用不動産・中古不動産の仕入れ再販・リノベーションなど、不動産業界の幅広い領域で実務経験を持つ。
自身でも不動産の購入を3回、売却を2回、リノベーションを1回経験した実践派。
現在はメディア取材・自社サービスが計6媒体に掲載されている。

火災保険は、住宅ローンをご利用の場合、実質的に加入が必須となります。
そのため、内容を十分に確認しないまま、案内されたプランにそのまま加入される方が少なくありません。
ここが損失の入口となります。
火災保険は、補償の取捨選択と契約期間の組み方によって、お支払いいただく保険料が数万円単位で変わります。
さらに、保険料はここ数年で大きく値上がりしています。
先に結論を申し上げます。
火災保険は「補償を足す」のではなく「不要な補償を削る」ことで最適化できます。
そのうえで、契約期間を最長に設定して割引を受け、複数社を比較することが重要です。
以下、順にご説明いたします。


火災保険はこの10年で累計40%以上値上げ。放置が最大の損

まず前提として、火災保険料は上昇を続けています。
保険料の基準となる参考純率は、損害保険料率算出機構がこの10年で5回引き上げました。
直近では2023年6月に全国平均13.0%という過去最大の引き上げが決定され、2024年10月から各社の保険料に反映されています。
背景には、自然災害の激甚化と、修繕費や資材価格の高騰があります。

火災保険の参考純率はこの10年で5回引き上げ(全国平均) +3.5% 2014年 +5.5% 2018年 +4.9% 2019年 +10.9% 2021年 +13.0% 2023年 2024年10月から保険料に反映
参考純率の改定率の推移です。単純累計で4割を超える引き上げになっています。改定年は損害保険料率算出機構の届出年です。

さらに2022年10月には、契約期間の上限が10年から5年に短縮されました。
2015年10月の制度変更で上限が10年となった直後に10年契約を結ばれた世帯が、2025年から順次満期を迎え、更新時にまとまった値上げに直面しています。
これがいわゆる2025年問題です。
つまり、見直しをせずに更新を続けるほど、保険料は上がっていく構造にあります。
放置することが最も高くつきます。
だからこそ、ご加入時と更新時に内容を見直すことが、そのまま節約につながります。


補償は「足す」より「削る」。タワマン高層階は水災を外せる

火災保険の補償は、火災のほか風災、水災、水漏れ、盗難、破損など、幅広い範囲をカバーしています。
補償を増やすほど保険料は上がります。
したがって、ご自身に不要な補償を見極めて削ることが、最も効果的です。
最大の判断ポイントが水災補償です。
2024年10月から、水災の保険料率が市区町村単位で1等地から5等地の5区分に細分化されました。
最もリスクの高い5等地の水災料率は、最も低い1等地の約1.2倍となります。

水災料率は市区町村単位で5区分に細分化(2024年10月から) 1等地 リスク最小 2等地 3等地 4等地 5等地 リスク最大 水災料率の差は約1.2倍
同じ建物でも所在地の等地区分で水災料率が変わります。ご自身の市区町村の等地は損害保険料率算出機構のサイトで確認できます。

ここで重要になるのが物件のタイプです。
タワーマンションの高層階で、近隣に河川や土砂災害の想定がなければ、水災による損害リスクは極めて限定的です。
この場合、水災補償を外すことで保険料を大きく抑えられます。
ご判断の前には、必ずハザードマップをご確認ください。
一方、戸建てや低層階、河川や海に近い物件では、水災補償を外すことはお勧めできません。
内水氾濫といって、ハザードマップで着色されていない地域でも下水があふれる現象があるため、地理的条件は慎重に確認する必要があります。
補償は一律に付けるものではなく、物件ごとに取捨選択するものです。


免責金額を使って保険料を下げる

免責金額とは、損害が発生した際の自己負担額のことです。
たとえば免責を10万円に設定すると、10万円までの損害は自己負担となり、それを超えた部分が保険金で支払われます。
免責を引き上げると、保険料は下がります。
免責を0円から10万円に変更するだけで、契約条件によっては年間1万円から2万円下がる例もあります。

免責10万円の場合の支払いイメージ(損害額30万円の例) 損害額 30万円 保険金で支払い 20万円 自己負担(免責) 10万円 免責を上げるほど保険料は下がる 0円から10万円に上げるだけで 年間1万円から2万円下がる例も 小さな損害は自分で払い 保険は災害級に絞る
免責は「保険を大きな損害に絞る」ための道具です。自己資金の厚みから逆算して設定します。

考え方はシンプルです。
数万円程度の小さな損害は自己負担とし、災害級の大きな損害に保険を絞る。
そのぶん保険料を抑えます。
免責分の自己資金をご用意いただける場合には、有効な方法です。
一方、手元資金に余裕がない場合は、免責を低めに設定して備えることをお勧めします。
ここも、ご自身の家計から逆算してお決めください。


契約期間は最長5年。長期一括で割安にする

火災保険は、契約期間が長いほど1年あたりの保険料が割安になります。
現在の上限は5年です。
1年契約を毎年更新するよりも、5年一括でご契約いただくほうが、年あたりのコストは下がります。
値上げが続く現在の環境では、現行の料率で5年分を固定できる点も大きなメリットです。
デメリットは、契約時の一括払いのご負担が大きいことです。
資金に余裕がある場合には、長期一括契約が合理的です。
一括が難しい場合は年払いも可能ですが、その場合は更新のたびに値上げの影響を受ける形となります。
迷われた際は、5年一括を基本にご検討ください。


地震保険は火災保険とセットでしか入れない

見落とされがちですが、火災保険だけでは地震による損害は補償されません。
地震、噴火、津波による損害を補償するには、地震保険への加入が必要です。
また、地震保険は単独では加入できず、火災保険とセットでのみ契約が可能です。
地震保険は国と保険会社が共同で運営する制度のため、保険料はどの保険会社でも同一です。
したがって、地震保険のために保険会社を選ぶ必要はありません。

地震保険の割引制度(いずれか1つのみ適用) 建築年割引(1981年6月以降) 10% 耐震等級割引(等級1) 10% 耐震等級割引(等級2) 30% 耐震等級割引(等級3) 50% 免震建築物割引 50%
地震保険の保険料は全社共通です。差がつくのは割引を確実に取れるかどうかだけです。

建築年や耐震性能に応じて、保険料が10%から最大50%割引される制度があります。
免震建築物や耐震等級3の住宅であれば50%、1981年6月以降に建築された新耐震基準の建物でも10%の割引が適用されます。
新築や耐震等級の高いマンションをご購入の場合は、この割引を確実にご活用ください。
地震保険に加入するかどうかは、立地の地震リスクと、被災時に自己資金でどこまで再建できるかを踏まえてご判断ください。


結論

1 ハザードマップで 不要な補償を削る 2 免責金額を家計に 合わせて設定 3 5年一括で契約し 割引を取る 4 複数社で同条件の 見積もりを比較 言われるまま入るのと、この手順で組むのとでは数万円単位の差がつきます
火災保険の最適化手順です。削る、絞る、固定する、比べる、の順で組みます。

火災保険は、次の手順でお選びいただくことをお勧めします。
まず、物件のタイプとハザードマップから、不要な補償を削ります。
タワーマンションの高層階であれば、水災補償の要否を必ずご検討ください。
次に、免責金額を家計に合わせて設定し、保険料を抑えます。
そのうえで、契約期間は最長の5年一括を基本とし、割引を受けます。
地震保険はセットでのみ加入できるため、割引を活用しつつ立地のリスクでご判断ください。
最後に、必ず複数社から同一条件のお見積もりを取得して比較します。
案内されたまま加入するのと、この手順で組み立てるのとでは、数万円単位の差が生じます。
火災保険も、大切な資産を守るための重要な意思決定です。

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